2014年度理事長所信


理事長  高橋 裕二    

スローガン 支え、守る。


はじめに

昔むかし、この街で生まれ育った一人の男性が、海図を手に取り、仲間を集め目の前に広がる大海原に挑みました。ところがいざ出航したものの、誰も航海の仕方を知らず、船の操作も初めてで、とにかく手探りでの船出となりました。ただ彼らの脳裏には「この街をよくする」という希望がありましたので、臆せず勇気ある行動が出来たのです。それは遡ること、44年前の1970年のことでした。当時の日本は、アジア初の万国博覧会が大阪で開催されたことにも代表されるように国際化や高度経済成長の真っただ中にあり、またその代償として公害問題やごみ問題など暗いニュースも巷に溢れ、調布市においても爆発的な人口増加による人間関係の形骸化もみられた時期でした。そんな時代に出航したこの“調布青年会議所”は、「日の丸」と「JC」を旗印にしていましたので、政治的な影響もあり、順風満帆とは言えないスタートでした。しかし時の調布青年会議所は、ならば「地域社会に溶け込むことから運動する」という強い信念を持ち続け、その結果多くの仲間が次々にその想いに共感し、今日までその時代ごとに抱える社会問題に真正面から取り組んで来たのです。

JAYCEEとして

44年前の航海のきっかけであり、唯一決まっていた目的地。時代は移っても、いまなお目指しているのが「明るい豊かな社会」です。一体、明るい豊かな社会とは何でしょうか。その答えを私たち一人ひとりが見出すには、まず自分たちが何者かを知らなければなりません。海図は自分自身の現在地を知らなければ十分に使えこなせないのです。  JCしかない時代からJCもある時代といわれるようになって久しくなり、さまざまな社会問題を解決できるNPO法人やNGOが活躍されている中で、私たちは何者で何が出来るのか。私が考える一番大きな違いは、入会する動機が奉仕活動をするためだけではなく、仕事に役立てるため、同世代の仲間作りのためなど様々であることです。つまり奉仕活動を通じ、私たちは青年会議所という学び舎で、メンバー同士が切磋琢磨し、四十にして惑わないように今のうちに様ざまな経験や時には失敗を繰り返しているのです。それは、自分が所属する企業や業界とのしがらみがありませんので、自分を試せる場であり、どんな人や行政とも対等に渡り合い、協力できる場でもあります。そして卒業後に、わが街や子供たちの為に活躍できる本物のリーダーとなることが出来るのです。
私たち一人ひとりが現在地を再確認した上で、思い込みを捨て、可能性を信じて、諸問題に対する調査、研究に取り組む事から2014年度は始めて参ります。

地域経済の屋台骨を支えよう

日本の企業数の99.7%、雇用の約7割を占めるのが中小企業です。しかし、厳しい経済環境が続く中、優れた技術や製品を持っていても苦しい経営を余儀なくされているところが少なくありません。日本の屋台骨を支え、経済大国を築いてきたその中小企業は自社の商品、サービスによって地域社会に貢献し、そこで働く従業員やその家族を第一に考えてきました。昨今、終身雇用や年功序列の崩壊を皮切りに、大手企業の粉飾・不正やブラックと呼ばれるほど過酷な条件を強いられる労働環境やグローバル化による内需の空洞化といった問題が後を絶ちません。それらを見聞きしてきた今の若者は、安定よりもやりがいや自分の居場所を求める傾向が強く、それでいて本来の働き方を近くで見せてくれ、裁量権と責任を持たせ、しかも親身になって守ってくれる風土で、社員を大事に育ててくれるそれら中小企業との出会いの機会があまりにも少ないように感じます。それは後継者問題に遅れをとり、長年地場で親しまれてきた味やサービス、技術が惜しくも途絶えてしまうリスクも内包します。本来その働きかたを肌で感じることこそ、日本企業が諸外国に類をみない、伝統や技術の継承が出来た由縁であり、多くの場合それは地域にある中小企業だったと歴史が証明しています。
私たちは地域内のハブとして、産学官民の連携とマッチングをして地域経済の屋台骨を支えていきたいと考えます。中小企業が持つアイデアや技術、そして若き青年や企業家の持つ夢とやる気を組み合わせて調布に新しい文化や価値を創っていこうではありませんか。身近にある課題は私たち自身の課題と捉え、ポロシャツの背中に書かれたアントレプレナーとして共に支え共に繁栄していきましょう。

子ども達の笑顔を集めよう

言うまでもなく今の子どもたちが生きていく未来を創るのも、壊すのも私たち大人です。未来を考える時にいつも思い出す言葉があります。それは23年前に12歳ながら世界環境サミットで各国の代表たちに問いかけた一人の女の子の伝説のスピーチです。
「どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください。」
今で言う原子力発電所問題がそうです。長年便利でローコストでこれ以上のものがないという、その「安全神話」を信じて疑わなかった結果、多くの身体的、心理的な苦痛を強いられる犠牲者が出ました。問題は自分たちに都合がいい解釈をし、他人任せにした大人たちにあるのではないでしょうか。失敗したらやり直しこれ以上、山積した問題を先送りにせず、子どもや孫やその孫まで安心で住みやすい社会を残すべきだと考えます。自分たちで蒔いた種です。12歳のその女の子の言葉に耳を傾け、「争いをしない」「他人を尊重する」「ちらかしたら自分でかたづける」「ほかの生き物をむやみに傷つけない」「わかちあう」そして「欲張らない」、いつも子どもに言っていることの手本を見せていくことから共に始めませんか。それで何百、何千人もの子供たちがそんな大人の真似をしてくれたら、きっといい未来が待っています。
2014年度は、そうした視点から、青少年健全育成事業として私たち大人が、子どもたちのことを第一に考え、共感する大人たちと手を取り合い、全ての子どもたちが公平にその天分や才能を発揮できる場となるための事業を開催致します。なぜなら私が12歳の子どもの言葉を大事にするように、大人を動かす原動力を持つのはやっぱり子どもたちの笑顔だと思うのです。

地域と共に

私は小学生の頃からスポーツ一筋で過ごしてきました。そこには同じ目標に向かって頑張る仲間の姿や応援してくれる周囲の期待があったから続けてこられたのだと思います。時に話を聞いてもらうだけで救ってくれた仲間や時に辛く、嫌な思いもしましたが、振り返れば愛情だったと気づかせてくれる先輩や恩師にも出会いました。後輩には負けられないと意地を張ったことは今では誇りとして染み付いています。目的を共有し、共に刺激を与えることは、人格のバランス感を養うのに不可欠です。私たちは決して一人で生きてはいないのです。しかし年を重ねるにつれ、しわとともに嫉妬やあせり、愚痴ばかりが増えていき、豊富な経験や体験がマイナスに働いて「どうせ○○だから」と諦めてしまうことが増えてきます。ただし、公益という人格をもつ調布青年会議所はそうあってはなりません。明るい豊かな社会の創造を宣言し、子どもたちの憧れの大人として振舞うことを意識付ける場であり、そして私たちにとって当たり前になっていることや忘れてしまっている大事なことを再確認できる場であるべきです。そうあるためにさまざまな分野の人との出会いを通じ、謙虚な姿勢で共に学び、共に刺激を受け、共に目標を共有することで新たな発見をし、常に前向きでいることが、人生に何十倍もの厚みを産むのだと思います。マイナス(-)の言葉を「吐」かないと、目標は「叶」うのです。どうか手に手をとり共に飛躍できる一年間を送っていきましょう。

災害と向き合って

  これまでも青年会議所メンバーは多くの東日本大震災の被災地復興支援に携わってまいりました。それは震災の時に生まれた、誰もが純粋に他がために何かをしたいと願う気持ちから実現できたことです。あの時ほど自然の猛威に恐れおののき生命の尊さや生きるとは何かを考えたことはありませんでしたが、ここに住んでいると、日々の生活に忙殺され、3年前のあの日の出来事を思い出すことが少なくなりました。しかし青年会議所の運動をするときは、あの日がきっかけで関わってきた沢山の人の顔が目に浮かび、リンクします。今も生きることに懸命に力を振り絞る被災地の仲間や子どもたちのために何かしたいと力が沸きます。昨年は大きな台風が同じ東京都の伊豆大島を襲い甚大な被害を出しました。私たちの背後にも着実に自然災害の足音が近づいてきているようです。来たる日に後悔しないように万全の準備をすることはもちろんのこと、より緊急性のある人に救助の手が回るための配慮や、現に目の前で助けを求めている人には心に寄り添い、力になることが必要です。そして、次代を担う子どもたちに震災について、自分の目で見たことや直接聞いた話、その時何が出来たのかをノンフィクションで伝えられる経験こそ、きっと大事な人を支え守る事ができるのだと思います。

オール会員拡大

  明るい豊かな社会を実現するためには一人でも多くの共感できる仲間が必要です。代々、この船は44年もの間、パドルを懸命に漕いで前に進んできました。しかし年々その担い手が減っています。背景には、第二次ベビーブームに生まれた世代が卒業を迎えることと、先に取り上げたNPO法人やNGOなどの諸団体の存在が上げられます。
しかし調布市には約6.5万人の20歳から40歳の青年が住んでおり、通勤者を含めれば更に多くの対象者がおります。あとはメンバー一人ひとりが青年会議所に誇りと危機感、責任を持ち、その価値を発信し続けることです。例えば、ネーム・バリュー、資金力というかさ上げされた状態での成果に不安を感じ、さらなる自己成長の機会を求めている人や、いつかは独立や転職を考えている人にとって、青年会議所で切磋琢磨することで、より説得力のある話し方や筋道をたてる思考が身につくことは魅力的ではないでしょうか、また失敗体験をすれば、自分に足りない何かに気づき、どのような自己研鑽を積む必要があるかが分かるはずです。それでいて自分が関わったことがきっかけで他の誰かが幸せになればこの上ありません、そのように考えます。私たちは先入観に囚われず、相手が関われる範囲で関わってもらうことで、そして自分たちがそうされてきたように少し背中を押してあげることで結果的にその人の成長になり、ひいては豊かな明日の礎を築いていきます。まずは人海戦術で情報を集め魅力的な事業に呼び込み、継続的なフォローを、一年間調布青年会議所メンバー全員で邁進して参ります。

マスかコアか

多くのチャンスや経験がこの青年会議所にはあります。卒業するメンバーは必ず「もっと早く始めていれば」と涙を流します。しかし、若くして入会しても途中退会してしまう人が多いのも事実です。実に3人に一人が退会している現状を改善しないといつまでも会員の純増は進みません。時代の渦に巻き込まれたこの船は入会と育成を交互にパドリングしてようやく前に進めるのです。まずは今消極的なメンバー一人ひとりにおきているミスマッチの解消をし、彼らにとって価値を見つけられる団体にしなくてはなりません。公益性を謳っている私たちが、メンバーの犠牲の上に成り立つことは本末転倒であり、修練に耐えた一部の人間の既得権で事業をすることが目的になってはいないだろうかと常に自分に問いかけなければなりません。ましてや40歳までという短期間にそのチャンスをメンバー一人ひとりに享受できなければなおさらです。私たちは青年会議所運動を学んでいるのではなく、自分や自分の家族、友人が笑顔になれる社会を作る手法として青年会議所で運動を行っているのです。だからメンバー全員とその家族にとって意味や価値があり、それらの合意の上にこそ魅力的な運動が成立し得るのだと考えます。それが伝播したときにようやく外部からの評価がもらえ、自然と仲間は増えるのだと思います。魚は光があるところに、人は笑顔があるところに集まるのです。

終わりに

私は、青年会議所メンバーであることに誇りを持っています。それは、入会してから一貫して信じている「正しいと思ったことを声高らかに発信できる団体」だからです。その行動が正しいか間違いか、良いか悪いかという判断自体、人やその時代によって180度変わるのだから「自分たちが決めたルールのもと、仲間を信じて支えあい、大事なものを全力で守る」行動を誰もが続けられる社会を目指します。もちろん沢山の苦難が待ち受けていることは覚悟の上です。でも私たちが乗るこの船にはたとえ岩礁にぶつかり穴が空いても、どうせ他人の船だから、と放っておく仲間はいませんし、目の前に大きな氷山が現れても、それは乗り越えれるかどうかを試されているのだとあきらめずに挑戦し続けるでしょう。そして、大海原で遭難している人を見つけたら、誰であろうととっさに手を差し伸べられる、そんな仲間と共に「支え、守る」をスローガンに明るい豊かな社会に向かう組織であり続けたいと思います。