2018年度 理事長所信

理事長  増田 健治 

スローガン


はじめに

 1949 年、戦後の荒廃した時代背景の中、日本の再建を目指し、「明るい豊かな社会の実現」を理想に掲げ、青年会議所運動の灯が東京の地にともりました。 その後日本は、「東洋の奇跡」とまで呼ばれた高度経済成長期を迎え、当時の青年たちが思い描いた「明るい豊かな社会」というものは、既に実現しているのかもしれません。 しかしながら現代においても、グ ローバル化や情報化、少子高齢化等の急激な社会構造の変化がもたらす諸問題、デフレを脱 却しきれない日本経済、東日本大震災に端を発した原発問題や災害対策、依然として様々な 社会問題が私たちの前に横たわっています。
 私は、「明るい豊かな社会」とは、その時代時代の価値観や有り様によって変わり続けるものだと考えています。 今の時代には今の時代の課題があり、未来には未来の課題があります。 現代を生きる私たちが今行うべきことは、「明るい豊かな社会」の実現を願い、この社会を少しでも良くしようと行動し、次世代へ引き継ぐことではないでしょうか。

一つの灯火を掲げて一隅を照らす。
そうした誠心誠意の歩みを続けると、いつか必ず共鳴する人が現れてくる。
一灯は二灯となり三灯となり、いつしか万灯となって国をほのかに照らすようになる。
― 『一燈照隅』 安岡正篤 ―

 社会を動かすという大きなことも、身近なことの積み重ねの延長線上にあります。 先ずは地域を、会社を、家族を、自分の周りを動かすことから全てが始まります。 そのためにも、私たち自身が周囲を照らせる灯りとならなければなりません。 それは、軽く吹き飛ばせば消えてしまうような弱々しい灯りであってはなりません。
 この青年会議所で様々なことを学び、自らで何が正しいかを見定めることの出来る力を養いましょう。 普段の生活ではすることの無い、青年会議所だから出来ることに挑戦しましょう。 青年会議所で得る経験を心の種火とし、容易に揺らぐことの無い『燈火』を、自分の中に燃やしましょう。
 一つ一つは小さな灯りかもしれません。ただ、私たち自身が、自分の今在る場所に真摯に向き合い精一杯努力することこそが、何れはこのまち全体を照らす一つの大きな篝火になると信じ、本年度の運動を展開して参ります。

【ひとづくり(指導力開発)】 ~ 自らの意思で行動を起こすことのできる、自走する組織の実現 ~

 青年会議所は「まちづくり」を通して「ひとづくり」を行う団体です。一年毎に役職が入れ替わる単年度制を採用しており、事業の継続性や組織力の維持という点ではデメリットでありますが、この組織がひとづくりに最も重点を置いていることの表れでもあります。 職種や立場の異なる人間が、様々な役職を経験することで多様な視点や価値観を身に付ける ことができ、人の立場に立って物事を考える当事者意識、「自分ならどうする」という主体 性が芽生えやすい環境を整えています。
 主体性は自らの意思で行動を起こそうとする在り方であり、青年会議所で最も学ぶべき指導力であると考えます。私たちは一つ一つの行動に、心の底から湧き上がる、「こうしたい」「こうするんだ」という確固たる意思を与えねばなりません。 その意思が、その決断が、意欲や情熱という自分自身を動かす原動力となり、心の芯たる種火を形成していくのです。
あらゆる場面において、「自分がどう思いどうしたいのか」ということを常に自問自答し、その決断の良いも悪いも全て受け止める勇気を持ち、青年会議所運動に取り組んでいきましょう。

【まちづくり(社会開発)】 ~ 地域を知り関心を深めて思い描く、まちの展望 ~

 調布の街は今、大きな変貌の真っ只中にあります。2012 年に京王線の地下化が実現し、線路で南北に分断されていた街が一つになりました。中心市街地にある各駅前広場の整備が進み、特に調布駅周辺では昨年 9 月に、駅舎跡地に大型商業施設が誕生しその様相を大きく変えています。 2019 年にはラグビーワールドカップ、2020 年には東京オリンピック・ パラリンピックと、世界最大級のスポーツイベントが 2 年続けてこの街にやってきます。 調布が大きな変貌を遂げる今だからこそ、「今後どのようなまちにしていきたいか」を市民一人一人がしっかりと思い描く必要があるのではないでしょうか。
 かつては「まちづくり」は、都市計画のことを指していた時代がありました。しかしながら地域毎の歴史や風土への配慮に欠ける、中央集権型の全国画一的な都市整備は終わりを告げ、行政主体からその地域をよく知る市民主体へと、まちづくりの在り方が転換しました。 つまりは道路や建物といった単なる空間の創造から、社会や経済、文化や環境といった生活 の根幹を成す暮らしそのものの創造、「暮らしづくり」へと移り変わったのです。
 「まち」とそこに住まう「ひと」を切り離して考えることは出来ません。日々の生活の中 にこそ地域課題があります。自分の普段の「生活」から少し手を広げ、この地域の「暮らし」を良くしましょう。 そんなに大きなことからでなくて良いのです。ただ、まちに関心を寄せ、 小さな気付きから少しでもまちを良くしていこうという意識が必要なのです。このまちで 「暮らす」限り、まちづくりに持続的・永続的に取り組まねばなりません。
そのためにも私たちは、まちのことをより深く知る努力をする必要があります。人は全く知らないことに興味を持つことはできません。ましてや「どのようなまちにしていきたいか」などという、自分なりの考えを持つことは殊更難しいものです。 地域の様々な取り組みに関 心を寄せ、多くの方々と交流するよう努めましょう。地域の現状を十分理解しながらも、青 年らしい斬新な切り口で地域課題にアプローチしていく、それこそが青年会議所が行うべ きまちづくりではないでしょうか。

~ 災害を見据えた「顔の見える関係性」の構築 ~

 多くの犠牲者を出した東日本大震災からまもなく 7 年が経とうとしています。この 7 年 間の間にも毎年のように全国各地で自然災害が発生しており、2016 年の熊本地震や2017年の福岡県を中心とした豪雨災害は記憶に新しい所です。 東京でも首都直下地震や相模ト ラフ地震が懸念される中、青年会議所としても地域防災との関わり方について改めて考え ていく必要があります。
 東日本大震災においては、本来被災者を支援すべき行政自体も被災し、行政機能が麻痺したことにより公助の限界が明らかになりました。また、多くの民間団体が災害支援活動を行い復興に寄与しましたが、各々の団体が独自に活動を行った結果、支援の重複や漏れが生じたことが課題に挙げられています。
 被災者のニーズを的確に把握し、災害時に効率良く支援を届けるためにも、行政や市内関係諸団体との連携は必須です。有事の際にも、各団体の担当者同士が連絡をし合い連携を取れるような繋がりを目指し、本年度は平時からの災害を見据えた「顔の見える関係性」を構築して参ります。

【青少年健全育成】 ~ 次代の担い手の基礎力の育成 ~

2014 年にオックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授が、『雇用の未来 コンピューター化によって仕事は失われるのか』という論文を発表しました。 米国労働省が定めた702の職業の内、今後どれだけコンピューター技術によって自動化されるかを分析し、10〜20年程の間に米国の労働人口の約47%の仕事が消滅するリスクが高いと結論付けました。 日本においても 2015 年に野村総合研究所が同様の手法で、国内601の職業の約49%が20年以内に失われると推計しています。
 技術の進歩と共にこれまででは考えられないほどのスピードで世の中が移り変わっています。 小学校ではプログラミング教育必修化が 2020 年から始まります。様々な作業や職業 が人工知能やロボットに置き換えられ、社会から新しいスキルの習得を求められる時代。今の子供たちが大人になる頃の社会を、私たち親世代が正確に思い描くことは不可能でしょう。 そのような未来に立ち向かう子供たちに私たちが伝えるべきことは、人としての本質的な力、先の見えない社会で生き抜くための基礎的な力ではないでしょうか。
 現在は情報洪水時代とも呼ばれ膨大な情報に溢れています。インターネットの普及は情報のグローバル化を進め、様々な知識へのアクセスを容易とした反面、知識を蓄えることの重要性は低下したように思います。 今後より一層重要になってくるのは、その知識を活用して自らで考える力です。社会に出ればあらゆる課題を解決する能力が求められます。私たちが伝えるのは一つ一つの課題の答えではなく、自力で立ち塞がる壁を乗り越えられる方法論のはずです。
 人は人との関係の中でしか生きられず、他者との関わりの中で自己形成を行い、他人との距離感や思いやりの心を学び、多彩な触発の中から人間としての可能性を広げていきます。 近年はコミュニケーションツールの多様化により、自分が属するコミュニティを自らで選択し易くなりました。 自由な繋がりを選べるようになった半面、濃い人間関係を結ぶ機会が減っているような印象を受けます。社会に出れば多様な人間とのコミュニケーションを否応無しに求められます。多感な時期である子供時代だからこそ、擬似体験では無いリアルな体験を通しての世代を超えた人々との関わりが必要です。 幼少期における多くの出会いが、社会性を養い、将来のモラルや社会規範にも影響を与えると考えています。

【会員拡大】 ~ 地域の未来を共に考えることのできる人財の発掘と育成 ~

 青年会議所は、継続的に社会に働きかける運動体です。私たちが地域により大きな運動を発信していくためにも、揺るぎない信念を持って会員拡大を進めていかなくてはなりません。 メンバーは組織運営の基盤となりますが、それ以上に会員拡大自体が、自分たちの住むまちを少しでも良くしようとする人財を地域に増やすための、JC 運動そのものだからです。 40 歳までという限られた時間の中で、同世代が同じ目的に向かって切磋琢磨して築かれる濃い人間関係。それは容易には解けない絆となり、青年会議所という学び舎を巣立ったとき、まちを支える力強いネットワークに変わります。このソフト面のまちづくりこそが会員拡大の本質なのです。
 拡大を成功に導くためには、私たち自身が青年会議所の意味と意義を自分の中にしっかりと持つことが重要です。青年会議所がなぜ必要なのか、青年会議所に対する自分なりの意義とは何なのか、熱く情熱を持って語ることができなければ、人の心を動かすことは到底できないでしょう。 メンバー一人一人が自分なりの答えを見出せたとき、組織力の強化・定着 率の改善・意欲の向上にも必ずつながると信じています。
 会員拡大は、青年会議所が発足以来休むこと無く行っている運動であり、今後も組織が続く限り継続していくべき事業です。組織全体で取り組むためにも、理事長である私が先頭に立ち、メンバー一丸となって会員拡大を成功させるために邁進して参ります。

【中長期ビジョン 2020】~ 第 49 回東京ブロック大会主管立候補に向けて ~

調布青年会議所では 3 年前に、運動の方向性に長期的視野を持たせるため、「調布に恋する市民があふれるまちへ ~世界に誇れる調布のために~」という中長期ビジョンを策定しました。 本年度はビジョン達成のために掲げられた具体的な目標の一つである、2020 年度「東京ブロック大会招致」に向けた検討を始めます。
 2020 年は調布青年会議所が創立 50 周年を迎えると共に、多摩地域で唯一の東京オリンピック・パラリンピックの開催地となります。「 世界に誇れる調布」を東京全体に発信し、「調布に恋する市民があふれるまち」となるよう、年齢役職を問わず、メンバー間で様々な議論と対話を重ねて参ります。 2年後の開催までに多くのメンバーが入れ替わるからこそ、 立候補前の本年度はメンバー間の意識統一に重点を置き、まちへの想いを一つにしていかねばなりません。

おわりに

長く青年会議所活動を続けていく中で、成功ばかりではなく、失敗することもあるでしょう。自分自身を否定されるような辛く苦しい体験をすることもあるかもしれません。そのような壁を目の前にしたときこそ、自分という存在が試されます。 それでも乗り越えようと足掻くのか、立ち尽くし置かれた状況を嘆くのか、その場から逃げ出すのか、その選択は常に自分にあります。

あなたが転んでしまったことに関心はない。
そこから立ち上がることに関心があるのだ。
― エイブラハム・リンカーン ―

必ず成功し続ける人はいません。その失敗にどう向き合いどう乗り越えるかが、我々には問われているのです。何度でも挑戦し、決して諦めない、そのひたむきな情熱こそが人を動かします。 辛いときほど自らを奮い立たせましょう、身を焦がすほどの情熱で自分自身を燃やし続けましょう。誰かや何かではなく、自分自身を拠り所にできるよう、自分自身が社会を照らす『燈火』になれるよう、共に運動を展開していきましょう。




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